2012年6月2日土曜日

ミュンヘン :: It's A Wonderful Life



2時間44分の長い作品ですが、
スピルバーグ入魂の力作で素晴らしい作品でした。
物語の発端なった恐ろしいミュンヘンオリンピックの惨劇事件は
この映画が話題になるまで知らなかったんです。
その事件の顛末を描く作品だとばかり思ってましたが、
後日談の報復の物語だったんですね。
なんでも世界情勢もあってアメリカではあまり映画の
プロモーションが出来なかったとか。

1972年、ドイツ・ミュンヘンオリンピックの選手村にパレスチナゲリラ
「黒い9月」が侵入、イスラエル人の選手や役員11名が人質になるが、
身柄拘束直後に2名、郊外の空港で9名全員が最終的には殺されてしまうと
いう惨劇が起こった。
イスラエルは秘密諜報機関「モサド」は首相の意向を受� ��、水面下で
報復にこのテロの首謀者である11名を暗殺する事が命題となる。
アヴナー(エリック・バナ)をリーダーとする5人のイスラエル人チームが
編成された。


スーフォールズスカイフォース

今まで自分が観た映画の中でも群を抜いて恐怖を感じた作品は
「シンドラーのリスト」でした。あれは怖かった。
ホラー的なこけ脅しの怖さではなく、精神的な恐怖。
誰かが狂ってある民族を迫害し、殺し始めたら、殺される側は
ホントに虫ケラみたいに殺されてしまいます。今まであった人生を
振り返る間もなく、瞬間的に人が蚊をベシャってつぶしちゃうような殺し。


滝VT古い家

スピルバーグってそんな「容赦ない恐怖」を一貫して描いてると思います。
攻撃してくる侵略者や敵は、とにかく問答無用で容赦なく殺しにやってくる。
これまでの作品でも、サメ、恐竜、戦争する敵国、宇宙からの侵略者etc..
が急に襲ってきて、もし自分� �がターゲットになったら?という恐怖をリアルに
描くのはスピルバーグの作家性のような気もします。

ミュンヘン惨劇の場面はスピルバーグらしいこの「容赦ない」描写。
えっそんな簡単に殺しちゃうの?という怖さ。

主人公アブナーは最初はテロの報道をテレビで見ていた程度で、個人的に
「すぐオレがあいつらを殺してやる!」って人では無かった。
これから子供も出来るし、出来るだけ平穏に生きていたいと思うタイプ
である事が冒頭に描写されています。


スーフォールズの郵便番号

↓下に続きま

集められたメンバーと彼の得意の手料理を食べながら談笑してる
場面は、これから11人もの人の命を奪おうとする集団には見えません。
映画でよく見かけるアジトに篭って「革命!」とか考えている誇張された
描写でないのがリアル。実際もこういう感じなんじゃないでしょうか。

怖い事なんですけど、暗殺チームの顛末は娯楽サスペンス映画の
エンターテイメント要素があるので、長い作品なのに
退屈せずに見れるのはそういう上手さがあるからだと思いました。

最初の暗殺を成功させる頃はまだ、ヤクザ映画のチンピラが始めて人殺す
場面のような危なっかしさが伝わってくるんですが、
映画が進行していくにつれて、どんどん「非情」な表情になってゆく
演出がとても素晴らしいと思いました。


ラ減量でパテ·アン

人が同じ人間を簡単に殺してしまうまで精神状態が変化するのは何故なのか?
選手虐殺のくだりは映画の中で主人公の悪夢として段階的に
描かれます。
これはアヴナーの心がどんどんその闇の世界へ引きづ� ��れて行く事を
暗示しているようにも感じました。


堤頭部スレートは、最初に国を下回る

ユダヤ系であるスピルバーグが描いているから、内容が少しは偏ってる
のかもしれないですが、
不公平じゃないと思うのは、ターゲットのそれぞれの殺される直前の描写。
かわいい娘がいたり、隣人に気さくに話しかける人だったり。
誰が見ても「凶悪」な人に見えない、逆に善良な人物じゃない!って
思えるように描いています。

よく考えたら、とんでもないテロ報復軍団の話なのに、
アヴナーの家族の事とか、精神的背景とかも描かれているので
ぼんやり見ていると、その中心となる主人公達に感情移入してしまいます。

仮にミュンヘン虐殺の加害者側の映画を作ったとしても同じような感覚に
なるかもしれない� �、暗殺リストの11人の誰かを主人公にしても
そうかもしれない。


これがこの映画が描こうとしている「怖さ」の本質なのかもしれません。
でも敵対する相手を「殺してやりたい」なんて思う気持ちって
どの時代のどの戦争もテロも、考える首謀者の思うように国を挙げてマインド
コントロールされているからじゃないのかと思います。
相手の事を理解してあげようと気持ちは誰かによって排除されてしまいます。
実行する人もごくごく普通の人間なのに、どうしてやらされてしまうのか。


フォールズチャーチのアート

でもやっぱり見る人によっては「腹立たしい」作品なのかもしれません。
ラストにアヴナーがエフライムに言い放ちます。

「こんな事を続けている先に平和なんて来ない。それが真理だ。」

kazuponの感想ー★★★★

officia l site

日本公式
「ミュンヘン」

Munich (2005)@imdb

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