ルーレットと文明社会
ルーレットは1655年、「人間は考える葦」という言葉で有名なフランス人の数学ブレーズ・パスカル(Blaise Pascal)によって生み出されたと言われています。が、諸説があり定かではありません。ルーレットの語源は、「小さな輪」を意味するフランス語に由来し、そこから「回転」「回転盤」という現在のゲームを指すようになりました。
果たして、ルーレットでどれだけ儲けることが出来るのでしょうか?
谷岡一郎氏 確率・統計であばくギャンブルのからくり(講談社BLUE BACKS)P140より
回数が多いときの収支がプラスになる確率を計算する。
ただし γ:(これ以上)勝つ回数
n:試行回数
p:勝つ確率
q:負ける確率(=1−p)
このあとZの値をZ―分布表で調べる。
上記の式を使って0―00のあるアメリカ式ルーレットで「赤」「黒」のどちらかに1万回賭けて5000回以上勝つ確率を計算します。すなわち収支がプラスになる確率です。
試行回数n=10000
勝つ確率pは
※ 出る目は1から36の赤黒18ずつ、それに赤でも黒でもない0と00が加わって38
これをZ分布表(正規分布)で調べると、それが起きる確率は0.01%にも満たない。
つまり、数をこなす内に必ずいつか文無しになるということです。これが大数の法則の表すところで試行回数を限りなく増やせば、勝ち負けの比率は18÷38 に近づく。実際にルーレットをしたとき、一時的には勝ちが続くように見えることがあったとしても、全体として(巨視的に)見れば、試行結果というものは各事象の起きる確率によって支配されているのです。つまり、ルーレットで儲けることは出来ないのです。
同書P28より、
アメリカン・ホイールのルーレットで「赤」「黒」どちらかに$1賭けて勝負するとして、元金$900を$1000(利益率11.1%)に出来る人は何人でしょう?
今、
、n=1000、x=900これを解くと
_@ ⇒ 1億人のうちの2656人程度…
およそ4万人に1人しか$1000にできない。残りの3万9999人は無一文になるのです。
$900からわずか$100儲けるのも極めて難しいのがギャンブルであるルーレットなのです。
しかし、計算上ではそうであっても、実際には、儲けている人もいます。少なくともそのように見えます。実はこれにはからくりがあります。それが分散の問題なのです。
勝つ確率は47%程度あります。日本の年末ジャンボ宝くじで$100ドル相当当てる確率はおよそ1万分の1ですがそれと比べると圧倒的に高いのです。ですから、1回$1なんてけちなことを言わずに、思い切って$100を1回の勝負に賭けてみます。勝つ確率は47%です。勝てば$100、一瞬にして儲けます。ここで、引き上げたらとりあえず$100の勝ち。4万人にひとりの勝者となります。負けたらあっさり引き上げます。$800手元に残ります。これでいいじゃないですか、無一� �になるよりも…。
1回$1だと全部続けて負けても(そんなことも起きにくいですが…)少なくとも1000回勝負できます。しかし、勝っても1回に付き$1しか儲からないのです。$100達成まで100回勝ち続けなければなりません。しかし、一度に$100賭けて勝てばたった1回の勝負で目標達成です。ここが実際のギャンブルの戦い方になるのです。
ルーレットの賭け方と払い戻し倍率
Inside Bets
払い戻し倍率
Single number(1つの数字)
36
Split(2つの数字)
18
Row(横一列の3つの数字)
12
Triple(トリプル)
12
Corner(ひとつの角に接する4つの数字)
9
Top Line(はじめの5つの数字: 0、00、1、2、3)
7
Line(横2列に含まれる6つの数字)
6
Outside Bets
払い戻し倍率
1st、2nd、3rdのColumn(横一列の12の数字)
3
1st、2nd、3rdのDozen
3
Red or Black(赤か黒か)
2
Odd or Even(奇数か偶数か)
2
Low Half or High Half(下半分1-18か、上半分19-36か)
2
以前、あるテレビ番組でルーレットによって大富豪になった男が紹介されました。実際にカジノで彼の方法で3回4回の勝負を通じて$1000の元金が$2000、$4000と増え、最後に$36000になったのです。およそ10万円以上が360万円以上30倍に膨れ上がりました。なるほど、これだと大富豪になるのは時間の問題です。彼の最後の決め台詞は「引き際が大切だ、今日はこれで終わりだ」でしたが、元金を出したスタッフが欲を出して更に続けようとして番組は終わりました。
戦法は単純です。「赤」「黒」、「奇数」「偶数」、「大きい数」「小さい数」の掛け率2倍のところから進みます。「赤」なら「赤」、「奇数」なら「奇数」など同じ種類の目が5回続けて出るまでじっと待ちます。コンピュータではなく実際にディーラーさんが雰囲気出� ��てくるくる回すので恐ろしく時間が掛かります。でも、条件が合うまで待ちます。で、5回「赤」が続けて出たところで、いきなり全額$1000(少なくとも彼にはこの額が最低条件のようでした)を反対の「黒」に賭けます。
と言うのが彼のリクツです。5回続けて同じ種類の目が出る確率は3%程度。6回目に反対の目が出る確率は97%以上だと言うのです。なるほどと思いますが、これは数学的に正しくありません。
1枚1枚カードを引いていくトランプと違ってルーレットの目は前の目に影響されず独立していますので、いつでも2分の1(以下)なのです。たしかに、5回以上「赤」が続くのはしょっちゅうではなく、3回「赤」が続くよりも少なく見えます。しかし、だからといって「赤」が続いた5回目の次の6回目の目を90%以上の確率で「黒」だと予測することは出来ないのです。自分の賭けた目が出る確率は常に47.37%以外の何物でもありません。ですが、番組の彼は勝ち続けます。
最後は、それまで長期間30-36の目が出ないことを確かめ、さら� ��最後に出ていた30台が奇数だったので反対の偶数の30、32、34、36の4つの数字に$1000ずつ、そのときまでに儲けた全資金を賭けました。負ければいきなり$0です。しかし、彼は勝ちました。4つの数字のうち1つが当たったのです。$3000失いましたが、$1000が36倍になって帰ってきました。
谷岡一郎氏によるとギャンブルに負ける方法が3つあります。すなわち大数の法則に引っかかる方法です。
① 回数をやたら増やす。
② 常に同じ金額を賭ける。
③ なるべく本命狙いに徹する。
③の本命狙いとは勝つ確率の一番高いもの、そして、リターンの少ないものです。勝ちやすいが儲けが少ない。同時にリスクが低いので負けにくいはずです。しかし、勝っても負けても小額なので、ルーレットではなかなか黒字にはならないのです。それは、分散が小さいからです。だから、勝とうとすると勝負回数が増えます。リスクは最小をとるので、賭ける金額は同じ小額の金額になりやすい。で、気が付いたら、やはり負けているのです。
では、数学的には正しくない論理で、でも、実際に富豪になってしまった上記の"ルーレットマン"の場合はどうでしょう。
滝大理石のtx
まず、①の勝負する回数はわずかです。特定の条件の目が5回連続揃うまで賭けません。ずっと見ています。これを「見(けん)」と言います。ずいぶん長くルーレットのテーブルについていましたが、勝負したのは4回だけでした。そして②の賭ける金額ですが金額は倍倍に増えていきました。だから、同じ金額を同じように賭けることはありません。最後の③本命狙いですが、彼の場合は、いきなり所持金すべてを、しかも最低$1000の高額のチップを賭けるので、リスクは最大です。一回でも負けると全く手元に残りません。しかし、勝てば大もうけです。すべてを賭けるので勝ち負けの幅は最大になります。分散が大きいと言うことです。そして、彼は、自分の中に確固たる ルールがあるらしく、儲けたらすぐ止めてしまうのです。
もちろん、理論的には彼は元金$1000すべてをすってしまうことがあるはずです。だが、彼は常に儲けも含めて資金をすべて賭けることで、自分の心理状態をコントロールしていると考えられます。彼のやり方では最大の損が最初の$1000以上に膨らむことが無いのです。この思い切りのよさが次の勝負におけるやる気を支えるのでしょう。結果、大数の法則に引っかからないで富豪になることが出来たと考えられます。
ギャンブルでは理論的には圧倒的に多くの人が負けます。実際もそうだと思います。ルーレットでは勝ちやすいのですが負けやすくもあるので、一万回も賭ければ、まず、儲かる人は計算上限りなくゼロになるのです。ですが、大数の法則に引っかかる前 に身を引けば、儲かっている状態で、止めることが可能です。それがあの"ルーレットマン"のルールなのです。負けることが確実なギャンブルで勝つこと自体、いかに自分の心(マインド)をコントロールするかが最大の課題です。番組でも、すっかり勝利に気をよくしたスタッフが勝負を続行しようとしていました。"ルーレットマン"は、いかに勝負を引き上げるかにマインドをコントロールしているのです。その工夫の一つが高額の資金をすべて賭けてしまうことなのです。負ければ一瞬ですべてを失うので、引き上げるべき状況は明確です。小さく賭けていると、勝っているのか負けているのかの感覚が次第に麻痺します。やがて賭けること自体が快楽になってしまうのです。だからだらだら続けてしまい、酒に飲まれるがごとくギャ ンブルに飲まれて依存症になるのです。依存症に勝利はありません。
では、期待値はどうでしょうか。学校で習った式は以下の通りです。
アメリカ式ルーレットの期待値はどのようにかけても一定です。赤黒で賭けようと1数字に賭けようと列にかけようと4つの数字にまたがって賭けようと、です。それは38個の数字に対して払い戻しの計算を36としているからです。「赤」「黒」に賭けても「0」「00」が出てしまえばどちらも負けなのです。これでカジノは儲けます。基本的に損するとわかっちゃいても止められないのですね。そこがカジノの演出の勝利です。
赤黒賭けの期待値
(38のうち当たるのは18でその倍率は2倍です)
1数字賭けの期待値
(38回に1回当たる計算となりその時の倍率は36倍です。平均では$38払うごとに$36戻ってくる計算になるわけです)
赤字ローカル線的表現になると、100円稼ぐのにいくらかかるのでしょうか。
で計算します。
すなわち100円の稼ぎに対して106円程度のコストがかかるわけです。国鉄廃止直前の最悪の路線では100円のために4000円程度使っていたと言われています。それよりははるかにましですが、ましな分、気が付かないうちにじわじわとお金が吸い取られてしまうのです。
これがルーレットの"事実"なのです。
【マーチンゲール法について】
"ルーレットマン"の"必勝法"は相当な根性が要るでしょう。あなたは、いきなり10万円を失うリスクを負えますか?2回に1回以上一瞬で、本当に一瞬で10万円を失うのです。そして、次の10万円を用意するまで絶対に深追いしないのです。これではギャンブルを楽しむどころではありません。
一般的には、一か八かといったようなやり方よりも、損失をある程度カバーする賭け方が用いられます。その代表格がマーチンゲール法です。
方法は単純です。確率が二分の一、掛け率が2倍のところで用いられます。
「負けたら次の賭け金を2倍にする」
…だけです。勝つまで続けます。そのときには最初にかけた分が儲けになります。資金が無限にあれば、単純に必勝法となります。
掛け金 損失の合計 勝ったとき 利益
1回目 $1 −$1 $2 $1
2回目 $2 −$3 $4 $1
3回目 $4 −$7 $8 $1
4回目 $8 −$15 $16 $1
5回目 $16 −$31 $32 $1
6回目 $32 −$63 $64 $1
7回目 $64 −$127 $128 $1
8回目 $128 −$255 $256 $1
9回目 $256 −$511 $512 $1
となります。
たったの$1儲けるために$511の損失を覚悟しなければならないのです。実は、ルーレットの出る目はランダムなので、結構同じ種類の目が続けて出ます。むしろ、感覚的にはきちんと交互に出ることの方が少ないかもしれません。ちなみにルーレットで、1913年に27回連続で黒が出た世界記録があるそうです。この場合、1円を儲けるために、勝とうと赤に賭け続けていれば…
となります。27回までに1億3421万7727円を失い、これを取り戻すためにはさらに1億3421万7728円の資金が必要です。つまり合計2億6843万5455円つぎ込むことになります。それで勝ってもたった1円の儲けです。普通は最低$1くらいは賭けるでしょうから、必要資金は$2億6千万。それでも勝つ確率は47.37%なのです。そんなお金が最初からあれば、わざわ ざルーレットでリスクを取るでしょうか。他の使い道があるでしょう。企業買収したほうがよっぽど儲かるかもしれませんね。でも、この状況下で$2億6千万をどぶに捨てることは絶対出来ません。借金してでも賭け続けるでしょう。
だからこそ、ギャンブルをいつ止めるかという自らのマインド・コントロールが重要な勝利の要素になってくるのです。
私が実際にコンピュータでマーチンゲール法をシミュレーションして見ました。賭ける単位を$10にしてどれだけ勝ち続けることが出来るか、です。9回まで追いかけることにしました。ですから$5110の軍資金が必要です。
scotlandsの人口は何ですか
この図では2500回目にカタストロフィーが来ました。それまで勝ち続けて$5110をわずかに超えた辺りでがくんときたのです。$5000超えたところでで止めとけばよかったと感じる一瞬です。
この図はもっと悲惨です。同じように$10を賭ける単位とし9回追いかけるために$5110用意しました。やはり利益が$5110を超えたあたりでカタストロフィーです。さらに$2000を超えたときにもう一回起きてしまい、赤字状態になりました。
このシミュレーションを何度か繰り返すうちに、気が付いたことがあります。この図でもそうですが、カタストロフィーを食らうと、その前の水準に戻るケースがほとんど無いのです。借金をすれば見かけは戻ることもありますが、もちろん赤字です。取り返そうとしても大変な苦労をします。なにしろマーチンゲール法を9回も繰り返した上で負けた場合、511回勝ち続けないといけないのです。計算では$5110で期待値94.73%なら$4840残れば御の字なのですが、マーチンゲール法では負けを取り戻そ うと回数を増やせば、負けたときの額が倍倍ゲームで大きくなるのです。
しかし、負けの損失を恐れて回数を少なくすればしょっちゅう負けます。たとえば3回だと損失の合計は7倍です。一回負けても7回勝ち続ければ元を取れます。
ところがこれにも落とし穴があります。
さっきの9回よりも3回の方が損失が圧倒的に小さいはずなのに、負ける回数も圧倒的に多いのでじりじりと負け続けていくのです。ほとんど儲けることはありません。
結局、期待値94.73%の壁、100円かけて5.3円ずつ失っていく大数の法則には逆らえないということです。
そうすると次は分散の問題になります。まず十分な数を賭けないようにします。
どう賭けても同じ期待値ですので、3回「赤」が続いたら反対の「黒」に賭けるという方法でシミュレートしました。すると始めの方の回ではある程度勝っています。ですが一度赤字ゾーンに入ると浮上してこないことが多いのです。だから、赤字になれば直ちに止めないと、損を取り返そうとしつこく勝負を繰り返すと大数の法則の網に引っかかります。勝っているうちに止めることの重要性がわかるでしょう。そして、大切なのが負けたときにさっと止めることです。株取引などでよく言われている「損切り」です。もちろん負けの膨らまないうちに、です。
一方、危険ですが、だらだら負け戦を続けないために、負けたときに、思い切って賭ける単位を$10から$70に変えるのも手です。$70――$140――$280で一発勝負すると、上手くいくと$70の損失を一気に取り戻せます。そのかわり$70×7=$490を損失するリスクも負うことになります。
どのみち、自分の資金を冷徹に評価していつ引き上げるか、そのタイミングをしっかりと把握しなければいけないのです。
ルーレットの出た目をグラフ化しました。一例ですが、じりじり右肩上がりに伸びている青い線が「0-00」の出た回数です。確実に伸びています。たとえば「赤」ばかり賭け続けていてもこの「0-00」が増加することで儲けがなくなるのです。この青い線のあらわす値を他の線が「赤――黒」「奇数――偶数」「大――小」が追い越すことはありません。これがカジノの利益につながるのです。
これを眺めて私は、「世の中」に似ていると感じました。「0-00」は地球上で絶対に消えることの無い"摩擦"のようです。人類が文明を発展させるとともに増えていく環境破壊も含めた様々なゴミをあらわしているようにも感じます。このゴミがいつか限界を超えたときカタストロフィーが起きて文明が崩壊する…。「0-00」が努力してもど うしても越えられない壁に思えます。
思い浮かぶのが自らの力を自慢しようと釈迦の手のひらで頑張った孫悟空の話です。私たちの多くも、釈迦の手のひらにいるような状態でしょう。生きるために必死に希望を保ち、その希望を壊さないために必死に生きる、で、時々ため息付きながら自分の感じる世界が全てだと思っています。そして、神・仏の前に平等であるはずの私たち人間は明らかな格差に身をゆだねながら暮らしています。日々、成功したり失敗したりを繰り返して死ぬまで生き続けているのです。
その成功とは何でしょう。失敗とは何でしょう。
【マーチンゲール法と社会システム】
私たちは文明社会に生きています。文明社会はどんどん人々を豊かにします。そして、リスクもその豊かさに比例して大きくなっていきます。私は、この豊かさとリスクの関係は"必勝法"マーチンゲール法で説明するのがぴったりだと考えています。
マーチンゲール法では「負けたら次の賭け金を2倍にする」するやり方で、負けによる損失を直ちにカバーします。資金が豊富である限り負けることはありません。しかし、私たちは孫悟空以上に限界のある人間です。いつか、資金が尽きる日が来ます。そのときの負けっぷりは文明が高度であればあるほど、恐らく人類最後、いや全地球最後の日かと思うくらいひどいものでしょう。しかもその日はほとんどの人にとって何の前ぶれも無く突然やってくるのです。
何気なく自動販売機でお茶を買う。このことをマーチンゲール法で考えてみます。ペットボトルのお茶は120〜150円くらいでしょう。このお茶がコインを入れたらすぐ飲めると言う事実を支えるシステムは少し考えるだけでもかなり複雑であることが想像できます。1本の ペットボトルの下に壮大なピラミッド的システムがぶら下がっています。まずは自動販売機という機械です。1本を売るためにあちらこちらに無数にあります。そこにお茶を届けるための数え切れない輸送トラック、世界中にそれこそ富士山の上にもある自動販売機に補充するお茶を生産する強大な工場。茶葉の栽培。製法の研究施設。容器であるペットボトルの製造。売るためのコマーシャルメッセージ、安全管理…。わずか120〜150円のペットボトルのお茶をすぐ飲めるようにするためのシステムに億単位のお金が投じられています。1本1本のお茶が全世界ですごいスピードで売れることによってかろうじて成り立つシステムです。どこか一箇所狂うと莫大な損失を被りかねません。たまたま1本のお茶にシステムの不具合で不純物が混じっ てしまった場合、他の何万何十万本のペットボトルのお茶が回収され廃棄されます。結局たった1本だけの問題としても、それだけではすまないはずです。
BSE(狂牛病)問題もそうです。わずかな油断で危険部位が混入したためにそのシステムで生産され輸入した牛肉、すなわちアメリカ産牛肉のすべてが廃棄されてしまうのです。屠殺された牛はただ捨てられるために殺されたのです。同時期のアメリカではどうやら誰もBSEに感染、死亡していないのですから、ほとんどの肉は"無実"だったに違いありません。なんという無残なことでしょう。
これが江戸時代の日本ならこうならないでしょう。腐った魚を出してしまった寿司店が出たからといってすべての寿司屋が営業停止になることは無かったはずです。そもそもお寿司のチェーン店など無かったでしょうから。もし、現在の日本で全国規模の回転寿司チェーン店に深刻な食中毒が発生したら、恐らく全店舗が営業停止になる可能性があります。今と比べたら不便な江戸時代も、シンプルなシステムの分だけリスクも少なかったと考えられます。一方で江戸の大火で大勢の人が死にました。しかし、それは"大江戸"と言う当時世界一の人口を誇った巨大なシステムのためで、一度火災が発生するとわっと燃え広がりました。ただ、再建も早かったようです。阪神淡路大震災から何年も経つのに未だに元通りの生活に戻れない人は たくさんいます。日本がバブル経済破裂の後遺症をなかなか克服できないでいるのも文明社会の複雑さのためだと言えます。
そして「原発問題」
平成23年3月11日金曜日午後2時46分に発生した「東日本大震災」マグネチュードは9.0でした。この地震エネルギーは阪神淡路大震災の1000倍だそうです。
この地震が原因で発生した津波が原子力発電所を襲いました。深刻な被害が出ています。
抑制受注は自分の記録に行きますか
世界で唯一の被爆国日本では特に原発に対するアレルギーが強く、反対運動も盛んでした。しかし、化石燃料の資源を持たない日本にとって原子力エネルギーは大変魅力的で、多くの原発が建設されました。しかも日本の技術水準には定評があり、テロリストによる破壊工作や航空機が突っ込むなどのワザと起こした事故でない限り、地震くらいなら大丈夫だろうと多くの人が思っていました。
確かに巨大地震には耐えました。が、波の押し流す力にはかなわなかったようです。冷却システムをもっていかれ核燃料が危険な状態になってしまったのです。じりじりと周りに放射性物質が漏れ出しています。
これもマーチンゲール法と社会システムの関係性を示しています。
ウラン235という石炭の300万倍のエネルギーを生み出す核エネルギーはそれだけカタストロフィーが起きたら深刻な被害をもたらします。だから石炭の蒸気機関よりも相当複雑で高度な安全システムが組み込まれていました。あたかも倍々で掛け金が増えていくマーチンゲール法をみる思いです。
小さなトラブルは何重にもブロックされた安全システムで無害化されました。
例えば放射線です。大量に浴びたら大変です。これを核燃料は常に出し続けます。トラブルです。しかし大丈夫です。危険な放射線は頑丈な圧力容器や格納容器によって外に漏れません。放っておいたら発熱して溶解してしまう核燃料は常にしっかりした水の冷却システムで守られています。放射能を浴びた水も幾十にも備えられた施設によって外部に漏れることはありません。一つの安全システムに不具合が生じても別のシステムがすぐにカバーします。だから小さいトラブルは全く無力化されています。
もし、今回の津波を防ごうとしたらおそらく今までの倍以上のコストをかけなければならなかったでしょう。つまり今回の地震でマーチンゲール法の倍々賭けの限界を超えてしまったのでした。
損害は深刻です。単に原子炉が壊れた、あるいは放射能が漏れたではすみません。今まで原子力が果たしてきた功績をチャラにしてしまいかねません。信用をなくし人々の勇気を萎えさせたからです。
マーチンゲール法的な発想でいくと、システムの仕組みが複雑になるということは、負けたときに倍倍で掛け金を積み上げていく回数が増加していくことを表します。つまり、損した掛け金の倍を新たに投入することで、見かけは負けた状態にならないのです。いわゆる負けの先送りです。そのうち、賭けに勝って、問題が解決すれば、自然と資金が増えていきます。マーチンゲール法の回数が10回20回と増えれば増えるほど、必要とされる資金は莫大になりますが、その分、負けることがどんどん減るので、とりあえず勝ち続けて、じりじりと資金が増えていく期間は平均的に長くなります。
文明が発展し、もっと豊かになると、知識・経験も豊富になり、技術が進歩してコントロールできるエネルギー量が増えてきます。たとえば木炭から石炭、石油、原子力と質的に扱えるエネルギーが進歩するわけです。これは、掛け金自体の増加を意味します。昔なら何年もかかった作業が、進歩した技術で一瞬で終われるようになるのです。しかし、「0-00」という摩擦は消えません。いつか、大コケにこける日が来ます。最後の審判というやつでしょうか。
その前に、どこかで進歩することを止めないといけないのです。しかし、まず無理です。なぜなら、文明社会自体がマーチンゲール法で賭け続けている社会だからです。文明社会は人類の問題を解決しません。
まず、遺伝子の研究やら臓器移植の技術が進んでも不老不死にはなれません。また、どんなにエネルギーが豊富に使えても永久機関は作れません。すべての進歩は消費のスピードをぐんぐん増しているだけなのです。医学が進んだからといって健康でいられる寿命が昔と比べて本当に伸びているのか。むしろ、文明社会のスピードに振り回され、心身ともに疲労し不健康な人が増えているかもしれないのです。賭けることが出来なくなればマーチンゲール法同様、わずかな儲けのために莫大な損が発生します。120円のペットボトル1本のために数億円の資金を張り続けておかなければならない。そのために、なんとしてでも120円のペットボトルを売り続けなくてはならないのです。飽きたからといって途中で止めることは許されない。倒産� ��たらえらいことです。だから、借金してでも賭け続けなければならないのです。これが文明社会の真の姿だと思います。
すなわち、文明社会における成功とは失敗を隠す、あるいは失敗の先送りをすることなのです。決して問題は解決しません。国家にせよ個人にせよ、財政が破綻したり、借金まみれになってしまったりするのは、文明社会では、ごく自然な成り行きなのです。マーチンゲール法が一度賭け始めたら止めることがどんどん難しくなっていくように、文明社会も始まったら後戻り出来ない運命なのです。滅びるその日まで…。
【ルーレットによる戦争ゲーム】
しかし、だからといって絶望する必要はありません。文明社会にすがりきってしまえば危険ですが、自分と社会の関係に距離をおけば、マーチンゲール法の無間地獄からは抜け出せます。それは失敗を先送りしないこと。つまり、しょっちゅう失敗することなのです。
勝率1%で十分。100回勝負で1回勝てばいい。100回中いつでも勝つ勝負はするな。百点満点テストは1点で十分。百点取れるテストは受けるなということです。この心構えで行けば危機にたいする勇気は万全です。文明社会の欠点は失敗を隠すことです。つまり、ウソを付くことです。何でも正直も疲れますが、ウソが増えると、文明の水面下で事態の深刻さが増してきます。いつか大事故です。だから、それを避けるために、自分だけにはウソをつかず、あるがままを受け入れ、自ら許すことです。
さて、文明社会でもっとも深刻な事態とは戦争です。一度本格的な戦争が起きてしまえば、現代では核戦争です。人類絶滅、いや現在の地球生命体の絶滅を意味します。戦争は無いに越したことはありませんが、もし起きてしまえば、そ� ��前の小さな戦争の段階で止めなければなりません。
では、戦争をマーチンゲール法を用いたルーレットに置き換えます。戦うとはルーレットを回すこととします。
まず、「0-00」の存在は戦闘における世界全体の消耗をあらわします。ずっと戦い続けていては、勝敗に関わらず双方が消耗します。やがて必ず破綻するでしょう。38数字賭けても支払いは36で計算され、平均100ポイントかけるたびに5.3ポイント失っていきます。基本的に戦争は儲かりません。
次に、交戦とは自分も相手もルーレットを回している状態です。攻撃とは自ら賭けることで、防御とは相手が賭けることです。自分の賭けの勝ちは自分の儲けであり、それは相手の分から奪います。相手の賭けの勝ちは相手の儲けで、それは自分の分から奪われます。
ルーレットは回数を賭け続けていけば計算上確実に文無しになります。だから、相手の賭け方を見ながら出来るだけ少ない回数で勝つことを目指します。自分が賭けに勝つ以外に、相手が賭けに負けることも勝敗の計算に入れることが出来ます。理論的には全く自分は賭けずに、つまり攻撃せずに、相手がマーチンゲール法で破綻するまで待つ戦略も成り立つのです。もし「0-00」が出たら双方とも負けとします。
"ルーレットマン"の"必勝法"のように一気に多額のポイントを賭けて勝負を決める方法もあります。じりじりとマーチンゲール法で稼いで戦機をうかがう方法もあります。どのように賭けていくかが要するに戦術です。ルーレットに必勝法は無いので、当然このゲームにも必勝法はありません。将棋・チェスのように駒の緻密な動きのコンビネーションはありませんが、大軍を指揮する軍司令官のように自軍の進退をざっくりと自在にコントロールできます。この方がむしろ実際の指揮官の心情を理解できるでしょう。
「坂の上の雲」第3巻で海軍少佐秋山真之が連合艦隊司令長官に内定した東郷平八郎大将に初めて出会ったときのくだりです。
(これは徳のある人物だ)
と、おもった。
(中略)
この東郷という人はおそろしく無口な人物であることを、真之はきいていた。(中略)平素も戦場にあるときも無駄口というものをたたいたことがなく、無口こそ将兵を統率する上での大きな条件であることからすれば、東郷は将としてきわめてふさわしい。
(中略)
「あの人の下なら、よほど大きな絵がかけそうだ」
因みに東郷平八郎は囲碁が好きだったそうですが、いわゆる"ザル"で全く強くなかったそうです。それでも彼は対馬沖でロシアのバルチック艦隊を撃滅します。彼の指揮は、黙って右手を上げ、さっと左へ振り下ろしただけでした。これで全艦隊は敵の直前で進路を大きく左に変える、後に「東郷ターン」と呼ばれる大回頭を行います。後の細かい戦闘はたゆまない訓練の成果と周到に準備された秋山少佐以下の作戦にしたがって、ほぼ自動的に行われたのでした。
攻撃だけでもダメ。さりとて、敵の失敗だけを期待して防御だけでもダメです。状況に応じて、できるだけ短い命令で全軍を動かすことが出来るようにするのが、指揮官の務めなのです。
ルーレットを利用することで、このあたりの呼吸を体感してみようという� ��けです。
マーチンゲール法によって大数の法則に引っかからないようにするためには、失敗を受け入れることが大切です。部下たちは必勝の信念で何の疑いも何の不平も無く死地に赴きます。しかし、指揮官は失敗を前向きに受け入れる度量が必須なのです。100回のうち99回失敗しても最後の1回ですべての損失をカバーしてしまえばそれで勝利なのです。そして、それは質より量だということです。勝利の鍵は質よりも量が握っているのが戦争の現実です。
日本のテレビ番組におけるヒーロー物では少数の選りすぐりがチームを組んで強大な敵と戦い、苦戦しながらも勝利を収めるストーリーが圧倒的です。科学特捜隊やゴレンジャー、科学忍者隊ガッチャマンなどです。しかし、実際の戦いでは少数精鋭が1度や2度勝つことは� ��っても最後は物量の力に負けるのが常です。数こそが力なのです。
半村良氏の「戦国自衛隊」は、戦国時代にタイムスリップした自衛隊の話です。1個中隊にも満たない部隊でしたが、戦車やヘリコプター、自動小銃などの強力な兵器を駆使し、戦国最強と謳われた武田軍団を撃破、信玄を討ち取ります。しかし、この一戦で多くの隊員と弾薬・燃料を失い、仲間であったはずの長尾景虎の裏切りによって全滅してしまいます。いかに強力な部隊でもその物量を維持できない限り、あっけなく滅んでしまうのです。
スターウオーズにおける帝国軍の機動歩兵はクローン技術によって、無限に補給できます。一方の反乱軍は生身の兵士たちです。普通なら帝国軍は負けません。多少、クローン兵士の技量が低かろうが、タイ・ファイター戦闘機がばたばた落とされようが、被った損害以上に新たに補給されれば、いずれ敵を圧倒します。数の力。これが戦争なのです。スターウオーズでは、結局トップである皇帝を滅ぼすことで勝利を得ました。しかも、直接手を下したのは主人公ルーク・スカイウオーカーではなく、敵役のダース・ベーダーでした。つまりは皇帝の誤算が招いた自滅だったわけです。そのあとの世界がどうなったかは分かりませんが、フランス革命やロシア革命などのその後の出来事から考えると、新たにシビア� �権力闘争がおきたに違いありません。ルークもレイア姫も新しい権力機構から恐らく邪魔者扱いされ歴史から葬り去られたでしょう。少数精鋭を目指すと必ず滅んでしまうのが歴史の教訓だということです。あのスーパー戦士、ジェダイナイトたちもエピソード3で、ほぼ壊滅です。新政権では、おそらく復活はありえないでしょう。なにしろ皇帝もダースベーダーもジェダイナイトの一派だったからです。"フォース"は大変迷惑な力だったということが彼らの歴史上の教訓です。ニュータイプなんか要らない。普通が一番なのです。
何回負けてもその損失以上に大きな数で勝負に何度でも再挑戦できる。これを整えるのが戦略の根本です。戦略として少数精鋭が多数を打ち破ることを基礎にしてはいけないのです。少数精鋭の高� ��能な兵器で圧倒するという考え方は間違っています。それよりも安上がりで数をすばやくそろえることの出来る兵器の方が主力兵器としては優れているのです。少数精鋭が活躍するのは恐らく戦いの分岐点で後一押しといった場面でしょう。もう息が切れそうだと戦いの限界を双方が感じたときこそ、少数精鋭による一撃のチャンスです。ここぞというときに、ほんの少しの打撃でぐらりと勝敗を決するのです。虎の子の部隊はそれまではじっとしていて、その存在すら悟られてはいけません。少数精鋭はむしろ予備的な存在なのです。出来れば使わないで済ますほうが戦略的にはいいのです。
この戦争の現実に従うとき、ルーレットという36+2の「小さな回転盤」は、質より量という戦争の実態を体感するシステムとして最適ではな いでしょうか。どのようにチップを賭けるかだけで戦略を単純に表現できます。あとはルーレットの回転を眺め、結果を素直に受け入れるだけなのです。
ちょうど株のやり取りに雰囲気が似ています。だから、株式の格言が結構参考になります。私がなるほどと思ったものをいくつかあげてみます。
いのち金には手をつけるな
ほとんどの人は大金持ちでは有りません。だから、何が「ゆとりの資金」かをよく考える必要があります。普通の人にとっては、ささやかな貯金やマイホームも含めてすべてが「いのち金」でしょう。投資にまわせるのは結局「人の金」だということです。普通の人に、資金のゆとりはありません。テレビや雑誌、セミナー、インターネットなど、ちょっとした情報に踊らされ、欲に駆られて、損すると困るような資金を投資にまわしてしまう。まず間違いなく失敗して取り返しがつかないことになります。「相手の金が投資の始まり」です。
株式と結婚するな、眠られぬほど、株を持つな
株式投資の成功率は、いうほど確率が高くないのです。そして、ルーレットは回数をたくさんすると大数の法則に引っかかり必ず負けます。このことを忘れてはいけません。とくにマーチンゲール法にはまってしまったときには気をつけましょう。ある程度勝ててしまうからです。依存症は人生を破滅させてしまいます。
決して相場巧者となるな、まして場面巧者となるな
カンと経験に頼り、相場のアヤでかせぐのでは、大きな利が得られないということです。株にもルーレットにも何がしかの"流れ"を感じることはあります。しかし、それで知ったかぶりして投資を続けるのは、ケガのモトとさとしている格言なのです。繰り返しますが、上がれば下がるのが株、回せば回すほど損するのがルーレットです。
休むも相場
株式投資も、休むことが大切だと説いた格言。判断に迷えばさっと退却する。相場に負けた人は負けることが決まってしまうずいぶん前からそのことに気が付いていたはずです。自分にウソをついて負けを先延ばしにしていただけなのです。迷いは何かのシグナルです。だから、自分を負けに追い込む前に、一息入れてください。ゆとりこそ、次の勝負につながります。「成功哲学じゃ」などとうそぶいて戦い続けていては必ず負けます。繰り返しますがマーチンゲール法のワナにくれぐれも注意です。
相場に過去はない、相場は明日もある
投資もルーレットも何もしなければ、絶対負けない、失わない。しかし、それでは臆病になって自分に自信がもてなくなります。臆病な人は他人にも辛く当たるようになり、やがて誰からも必要とされなくなるでしょう。つらい過去に縛られていると、傷つくことを恐れて、未来に向かって歩み出せません。過去はすでに去ってもう無いのです。この格言は、いたずらに過去のことを思い返すのではなく、投資には前向きの姿勢が大切、と説いています。所詮、自分の不幸は他人にとっては「笑い話」「人の振り見てわが振り直せ」「蜜の味」等々 大したことでは無い。ならば悩むだけ無駄というもの。今こそが大切です。なんとかなります。明日があります。
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